花森安治と「暮しの手帖」展@世田谷文学館

http://www.setabun.or.jp/kurashinotecho.htm
今日から始まった特別展示を見てきた。雑誌表紙の原画や広告の版下など、生で見る機会がないものが多く展示されていて、現地まで出向いた甲斐があった。とくに素敵だったのは花森氏が手がけた書籍の装丁がずらっと並んだ一角と、雑誌表紙の原画。丁寧に色付けされたものから鉛筆でラフに輪郭だけつけたものとまちまちだが、どれも目に心地よい。また、孫に送った絵手紙や入院中に枕元の時計をスケッチしたものなどが人物史的に面白かった。
自分は「暮しの手帖」という雑誌に思い入れがあるような年齢ではないし、生活の向上について考えたこともない自堕落な消費者だが、花森氏のレタリングや装丁、世間を突き刺すキャッチコピーの創作者として興味を持っていた。加えて、昔のヘンな人の話を知りたいという野次馬的興味もある。
カタログは1300部限定で発行されているのだが、こちらは展示内容で紹介しきれなかった「暮しの手帖」特集記事が中心であったので購入しなかった。今回の展示に近いのは『暮しの手帖別冊・保存版3「花森安治」』のほう。花森さんの描いた絵がたくさん入ってたのでこちらを購入した。執筆陣も豪華。暮しの手帖社では、短期間ながら森茉莉を雇っていたのだという。雇ったほうも雇われたほうもさぞ大変だったことだろう。森茉莉自身がその顛末を書いたエッセイが収録されている。

常設展のほうは区内在住歴のある作家を概要的に紹介するもの。パネルの解説と直筆原稿や持ち物等を配置して立体的に展示している。森茉莉の直筆原稿とパッパ(森鴎外)のくれたモザイクの首飾り*1が見れたので何も言うことはない。あとは北杜夫関係で青山脳病院の再現ジオラマが圧巻。それだけで『楡家の人びと』読もうかなとか思った。戦略に嵌まり過ぎだ。あと、寺山・荷風・乱歩・中井英夫の人形を街に連れ出して撮った写真が面白かった。中井英夫の周りに5色のバラが配置されてるのが最高の演出。『虚無への供物 (講談社文庫)』は日本探偵小説三大奇書*2というので手に取ったはいいけど、冗長で退屈で、でも何とか読み通したのは今日ここで笑うためだったのだと分かった。
新宿に戻って東口「アカシヤ」でロールキャベツ定食。

*1:独逸製。例によって部屋で紛失、その後甥が発見とエッセイにある

*2:夢野久作ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎黒死館殺人事件』、塔晶夫(中井英夫) 『虚無への供物』。探偵小説の枠からハミ出た幻想怪奇風味が共通する。