エキナカ、都市部で拡大 商業利用「駅前」に脅威

http://www.asahi.com/business/update/1129/053.html
以下は引用。

エキナカ、都市部で拡大 商業利用「駅前」に脅威

2005年11月29日07時44分

 駅の改札口からホームに至るまでの空間を商業利用する「エキナカ」ビジネスが大都市圏で拡大している。見慣れた売店や飲食店とは一線を画し、女性客を狙った菓子や雑貨の店、美容関連などサービス業にも手を広げている。人通りの多い「エキナカ」は「一等地中の一等地」。鉄道会社の開発にも力が入るが、駅前一等地に以前からある商業施設などと競合する地域も出ている。

 1日平均で約30万人が乗車するJR品川駅(東京都港区)。中央改札口を入って左側の商業施設「エキュート品川」は、10月1日の開業だ。

 線路やホームの上に広がる2層の吹き抜け空間は、和洋の総菜や有名菓子店、レストランなど46店が軒を連ね、デパ地下のような雰囲気。1日平均約2万人が利用し、昼時や夕方は近くに勤める会社員らでにぎわう。定期券があれば、エキナカでも「入場無料」だ。

 エキュートは、駅の利便性を高めるJR東日本の「ステーションルネッサンス構想」の柱。品川駅は3月開業の大宮駅(さいたま市)に続く2カ所目で、07年度は立川駅(東京都立川市)にも出す計画だ。

 多くの人が行き交う改札口付近は「エキナカ」と呼ばれる。安全確保の面から通路の広さを十分に取るといった制約があるため、商業利用が進まず、これまで売店や軽食店などしかなかった。

 エキュートのような大型開発は、改修工事で改札口の中の面積を広く取るという発想の転換で、この流れを変えた。

 12月2日に東京メトロ表参道駅(港区)に開業する「エチカ表参道」は、地下鉄駅構内の商業施設としては日本最大級だ。駅員控室の統合などで生まれた改札内外の約1300平方メートルの空間に、26店が入る。

 若い女性向けの美容室、エステ、化粧品店のほか、イタリア料理などをそろえたフードコートもある。表参道にはおしゃれな飲食店が多いため、「女性が1人でも気軽に立ち寄れるようにして、地上の店との違いを出した」と東京メトロの開発担当者。

 エキナカなどに出す店舗もユニークなものが増えている。東京急行電鉄は、他社の駅を含む8カ所で展開する雑貨店「ランキンランキン」を、07年までに7カ所で追加出店する。化粧品や飲料、CDなどさまざまな分野の売り上げランキングに沿って品ぞろえする手法で、流行の発信拠点にもなっている。

 関西圏では、阪急電鉄が駅構内を中心に直営の書店を増やしている。JR西日本は9月、新大阪駅や京都駅などに無線インターネット接続ができるカフェを開店した。

 各社に共通するのは、駅の魅力を高め乗客を増やし、併せて鉄道以外の収入源も開拓する姿勢だ。ただ、好立地への出店は、周辺の商業施設にとってはライバル出現にほかならない。

 エキュート大宮の場合、予想売上高は55億円にのぼる。JR東日本は「駅のにぎわいは街全体の活性化につながる」と強調するが、駅前の高島屋大宮店では「食品売り場にはエキュートと同じブランドの店もあり、若干影響が出ている」(広報担当者)という。