富士山麓の山荘でつけていた日記をまとめたもの。
夏に読みたくなるのは真夏に飼い犬が死んだ場面の描写が鮮烈だったから。
晩年に書かれた「日日雑記 (中公文庫)」は冬に読みたくなる。
だんだんに周りの人が亡くなり、徐々に迫って来る静謐にやがて自分も飲み込まれるだろう、という予感に充ちているように感じる。
どちらも学生の頃に読んでいれば、今とはまったく違う感想を持っただろう。
きっとおもしろいとは感じなかったのではないだろうか。
ついでに、といっては申し訳ないが、武田泰淳の「目まいのする散歩 (中公文庫)」も読む。
武田夫人のことを「武田百合子」というひとりの作家として見るようになってからの読者と、発刊当時の読者では、百合子さんに関する描写に対して感じるものにずいぶん隔たりがあるのだろうと想像した。細やかな思索と表現にうっとりしながら、豪胆な百合子さんのエピソードを楽しみながら読んだ。
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
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